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暴漢のひざ蹴り直撃で涙…リマに特別賞
アテネ五輪陸上男子マラソンでトップを独走していたバンデルレイ・デ・リマ(35=ブラジル)が暴漢に襲撃されるアクシデントが起きた。35キロすぎに突然飛び出してきた男に沿道に押し倒された。その後、レースに復帰したリマは失速し銅メダルに終わったが、笑顔で誇らしげにゴール。国際オリンピック委員会(IOC)は同選手のスポーツマンシップをたたえて、近代五輪の父クーベルタン男爵の名前を冠したメダルの贈呈を決めた。日本勢は油谷繁(27)が5位、諏訪利成(27)が6位と3大会ぶりに入賞。国近友昭(31)は42位に終わった。
前代未聞のアクシデントは、勝負どころの残り7キロ付近で起きた。リマの左側から男が飛び出してきた。飛びつかれたリマが、観客で埋まる沿道に押し倒された。男のひざ蹴りが右太ももを直撃。数秒ほどもみ合った。沿道の観客と自転車で伴走していた警備員が男を引き離す。リマは必死にコースへ逃げ出し、何とか再スタートを切ったが、不運な出来事に両手を広げ首を振った。
代償はあまりに大きすぎた。リードを大きくロス。後方には2位集団が近づいていた。それまでのリズミカルな走りができず失速。ついに38キロ付近で優勝したバルディニに抜かれた。「1度崩れたリズムを取り戻すのは難しかった。勝てると信じて集中して走ったが、事件で金メダルを失った」と、レース後に振り返った。さらに「相手がナイフを持っていて、殺されるかもしれないと怖くて仕方なかった」と語った。
しかし、リマは最後まであきらめなかった。競技場に3番目に入ってくると、モニターで経過を見ていた観客から大歓声を受けた。リマはトラックをジグザグに走るユーモラスな走りを見せて、スタンドに投げキス。閉会式で行われた表彰式でも誇らしげに銅メダルを掲げて見せた。
レース後、ブラジル陸連はもう1つの金メダルをリマに贈るように求めたが、国際陸上競技連盟(IAAF)に却下された。ブラジル側はこれを不服としてスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴する意向を示した。しかし、その一方でIOCは同選手のスポーツマンシップをたたえ、近代五輪の父クーベルタン男爵の名前を冠したメダルを贈呈することを決めた。
組織委員会のずさんな警備体制が招いた大失態だった。アクシデントに見舞われた犠牲者は悔しさのにじむコメントの後、こう付け加えた。「たくさん練習をしたし、銅メダルを取れてうれしい」。不運を乗り越えて勝ち取った銅メダルには金メダル以上の価値があった。
[2004/8/31/09:06 紙面から]
写真=表彰式で銅メダルを手に喜ぶリマ(撮影・野上伸悟)
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