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後藤新弥のDAYS'
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2004年08月21日更新

日本のホーム五輪

<谷、北島の金ではずみがついた>

 うそだろう、と思うような金メダル・ラッシュだ。

 なんで? の背景には、むろんIOC(国際オリンピック委員会)とドーピング(薬物使用)の死闘が、今回は前者に軍配が上がり、世界の従来のトップが、従来のようなパフォーマンスを発揮できなくなったことがあるだろう。

 「だれが」といった、明白な事例も陸上競技などでは挙げられるが、それ以上に全体としての「体力」が、平均化してきたことは否めない。伸び率が低下し、ベテランが生き残る率が減った。ここ数年、以前のような「薬の助けを借りたトレーニング」ができなくなった。

 その点では日本がさまざまな面で大きなチャンスを得た大会だが、だからといって「簡単に勝てる」ものではない。

 チャンスは平等に分配されており、それをどう生かすかが、カギ。そこに、五輪の「団体戦的特質」が加わってくる。

 柔道も水泳も個人種目だが、同時に「だれかがきっかけを作る」ことで、チーム全体の士気が上がり、「あいつがやれるなら、おれだって」というムードができてくる。逆もまた然りで、最初の出場者が自己ベストを発揮できないと、後続はネガティブな意味で気楽になり、ずるずると成績が後退する。緊張や圧力が無ければ、世界の群れを抜け出す爆発力は望むべくもない。

 その意味では北島の功績は大きい。3つ目の金メダルをあげてもいいだろう。水泳だけでなく、日本全体のムードを盛り上げたことに対して。

 さらに谷、野村の金。

 ここまでくると、もはや「遠い国」ギリシャという雰囲気ではなく、「親日国ギリシャでの五輪」という、ホームに近い感覚が生まれてくる。

 追い風をプラスにできた。

 個人的には、女子柔道の阿武、塚田の「重量級」が、やっと花束を手にしたことが何よりうれしい。五輪には魔物が棲(す)む、などという言い方もあるが、優しい神様もいるのだ。

 スターになるわけでもなく、威張るわけでもなく、ただひたすらに重量級柔道を続けてきた阿武は、これまで2回の五輪では初戦敗退した。世界選手権では勝ったが、アトランタ、シドニーの前年は、どこかでぽろりと負けており、万全とは言い難かった。今回は、03年の国際大会は完勝。前回2つは負けるべくして負けたのかもしれないし、今回は勝つべくして勝ったのだろう。

 阿武の神経は細やかだ。大きな大会の前には自分を追い込みすぎるきらいがあった。負けたビデオは、直視できなかった。

 けれど、こどもたちに「負けたら、なぜ負けたかをよく研究すること」と教えていて、「あ、自分はそれを怖がっている」ことにはっとし、シドニー五輪後は勇気をふるって敗戦の分析をするようになった。エゴとの戦いは、本番以上に苦しく、つらいものだが、それを制した者が、真のチャンピオンになれる。1度や2度は勝てても、自分自身を超えない者に道を極めることは不可能だ。

 阿武は、それを超えた。

 78キロ超級の塚田もそうだ。

 高校生のとき、ラニングがおそく、「体重110キロの人とは一緒にやってけない」と先輩にいやみを言われた。塚田は傷つき、自分に負けた。神経性腸炎になった。

 エゴとの戦いは、だれしもが一度ならず経験する。そこを、どう切り抜けてはい上がるかが、強くなるか、逃げる人生になるかの決め手になる。

 塚田の母親は、「自分で治りなさい。柔道好きでやってるんだから」と、突き放したそうだ。

 いい医者は「自分の中に、自分を治す力があるはず。それを使いなさい」と、自立を促す。ここであまり甘やかし、薬や甘言に頼らせると、つぎにまた落ち込んだときに、同じことになる。子を千尋の谷に突き落とすのは、こういうときなのだ。

 裏を返せば、勇者はみな、傷だらけ。

 傷ついた分だけ、強くなり、優しくなるのだ。

<百メートル> 陸上競技男子百メートルが始まる。

 モーリス・グリーンは9秒79の世界新を99年にマークしている。

 この9秒79は、ソウル五輪でベン・ジョンソンが薬物使用した肉体でマークし、その後抹消された、汚れた記録でもある。

 世界記録はその後、モンゴメリによって9秒78に塗り替えられたが、モンゴメリには確定的な薬物疑惑がかけられており、今大会は出場しない。このままいけば記録抹消もありうる。

 世界最高記録保持者の名誉は再びグリーンに戻されるかもしれない。

 9秒79の呪縛から、人類の百メートルが抜け出すのは、いつの日だろうか。

  <女子マラソン> 女子マラソンは、ラドクリフやヌデレバらの「アンダー20分」勢が平常なら、「飛び出す」とか「スパート」ではなく、すんなり最初からマイペースで走り出せば、日本勢の勝ち目は減ってしまう。金を狙って食い下がるか、銀を狙って無視するか。そこが難しい。

 上りではなく、戦略上のカギを握るのは下りの10キロをどうするかだ。

 野口の弱点は、ストライドが長いためにスピード変化への対応が、ピッチ型より不利な点だ。長い下りの疾走競争なら、チャンスがある。

 超高速レースでなければ、坂本には混戦を制すチャンスがある。

 乱戦なら、土佐も生きる。

 ラドクリフが様子を見ながら山の頂上からスパートをかける、というのが一般的な見方だが、そこまで待たないかも知れない。


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 【郵送宛先】 郵便番号104・8055 日刊スポーツ新聞社 編集局 後藤新弥

著者プロフィル
 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、58歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
【 詳細プロフィルへ

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