ハンマーの申し子、室伏の追求は続く
投てき一家の遺伝子とあくなき探求心が結実し、陸上男子ハンマー投げの室伏広治(29)が銀メダルを獲得した。
5投目を終え、82メートル35で2位につけた。最終の6投目、鉄球は大きなアーチを描いたが82メートル91。「最後は渾身(こんしん)の力で投げた。届いたかと思った。残念」。あと28センチ、及ばなかったのを知ると、両手で地面をたたいて悔しがったが、日本投てき史上初のメダル獲得。快挙には違いない。
「アジアの鉄人」と呼ばれた父・重信氏と、やり投げのルーマニア代表だったセラフィナさんとの間に長男として生まれた。父が「広治が何人もいたら楽しいだろうね」というほど運動能力は抜群。その後、41歳で現役を退くまで、試行錯誤を続けた父から技術を受け継ぎ、自らを鍛え抜いた。
中京大に進学後、父の指導を本格的に受けるようになり、ハンマー投げの専門的な技術を学び始める。「高校までは要領だけでやっていた。厳しい世界に飛び込まないといけないときがきた」。ウエートトレーニングを6時間休まずに続けたり、冬場の夜の11時をすぎても延々と投げ続けたこともあった。
昨季、世界歴代3位の84メートル86を投げたが、よりハンマー投げを究めるために、新たな技術を体得しようとしている。「ここ2、3年でまた記録を伸ばす自信がある。やるべき課題は分かっているので、楽しみ」。もはやハンマー投げの追求が室伏の運命。自らの可能性を求める人生は、まだまだ続く。(共同)
[2004/8/23/13:29]
写真=男子ハンマー投げ決勝 6投目、雄たけびを上げる室伏広治(代表撮影・共同)
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