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 女子テコンドー
2004年4月6日付紙面より

テコンドー岡本、JOC特例で五輪へ

個人資格でアテネ五輪へ派遣となった岡本依子

写真=個人資格でアテネ五輪へ派遣となった岡本依子

 日本オリンピック委員会(JOC)が、超ウルトラCの特別救済措置を適用し、テコンドーの岡本依子(32=ルネスかなざわ)のアテネ五輪派遣を決めた。JOCは5日、幹部会を開き、五輪憲章細則に従って、対立している全日本テコンドー協会、日本テコンドー連合の解散がなくとも、JOCが独自に国内競技団体が存在しないと判断。岡本の個人資格での派遣を満場一致で決定した。12日に理事懇談会を開催し、早急に派遣への事務手続きに入る。

 世論まで巻き込んだ岡本派遣騒動は、超ウルトラCで決着が付いた。JOCの竹田恒和会長(56)は「このようになった責任は両団体にある。しかし、我々は選手を派遣するのが役目。あくまでJOC独自の判断で個人資格で派遣する」と、今回のドタバタ騒動に終止符を打った。

 竹田会長は、先月30日から、国際オリンピック委員会(IOC)の会議でカナダ・バンクーバーに出張。会議終了後の現地時間1日に、IOCのフェリ五輪統括部長と国内テコンドー問題を協議した。その結果、「国内団体が存在するかどうかは、各NOC(日本ではJOC)が判断できる。(両団体が解散しなくとも)派遣はできる」(竹田会長)という答えをもらった。

 JOCは当初、先月31日までに対立する両団体が統一しなければ派遣は断念するという方針を打ち出していた。結局、両団体は31日までに統一できず、1日にJOCは「統一での派遣は断念。ただ、28日の1次エントリーまで待つことは可能」と、事実上、温情での期限延長を表明した。

 しかし、全日本テコンドー協会の衛藤征士郎会長が「統一など考えられない」と話したように、現状では統一は不可能だった。残された個人資格での派遣についても、JOCは「両団体が解散し、五輪憲章細則に照らし合わせて、団体が存在しない状態にしない限り、派遣はできない」としていた。

 その見解を示してからわずか4日で、IOCの見解とはいえ、JOCは正反対の結論を導き出した。竹田会長は「五輪憲章の解釈の違い」と、その食い違いを説明した。しかし、自ら五輪出場権を獲得、本大会ではメダルも期待できる岡本が涙で訴え、派遣を願う約9万5000人の署名が集まった。小泉首相、文科相ら政治家の発言も相次いだ。存在する団体を「存在しない」としてまでも、岡本の派遣を最優先させた。個人派遣は日本五輪史上初めてのことだ。

 ◆オリンピック憲章参加登録の個人資格 第5章第49条「エントリー」の細則にある。「国内に承認のNOC(日本ならJOC)がある国で、特定の競技のための国内競技連盟が存在しない場合は、NOCは競技者を個人の資格でオリンピックのその競技にエントリーできる。ただし、IOC理事会およびその競技を管理しているIF(テコンドーなら世界連盟)の承認を受けることが前提条件」。


岡本「金取れるよう頑張る」

 現在韓国で合宿中の岡本は所属会社を通じて「大変うれしい。たくさんの方からご支援頂き、本当に感謝しています。気持ちを切り替えて金メダルをとれるように頑張ります」とコメントした。6日には同地で喜びの会見を行う。

 大阪府門真市の自宅では母浩子さん(59)が「9万5000人の署名のおかげです。皆さんの応援がなければ五輪派遣は実現しなかった」と安心するように言った。父浩さん(62)は経営する鉄工所の仕事を2週間以上休んで派遣を訴える署名活動に専念した。「チャンスが与えられなければどうしようもない。親として無我夢中で突っ走ってきた」と喜んだ。

 岡本の自宅には両親を含め後援会の支援者ら約30人が五輪派遣決定を祝った。町内会の看板には「祝五輪出場決定」の張り紙。近所の人たちからは「決定を覆したら私らが出したる」との声も上がるなど、喜びムードにつつまれた。父浩さんは「あとは本人がやってくれるはずです」と娘の五輪金メダル獲得に思いをはせた。

「英断感謝」協会 「いいこと」練合

 岡本が所属する全日本協会の衛藤征士郎会長は、JOCの決定を歓迎した。「大変喜んでおり、ほっとしている。英断に深く感謝する」とコメントした。個人資格による派遣には世界連盟の承認が必要なため、今週中にも衛藤会長が連盟本部のある韓国に渡り、折衝する。また、日本連合の森喬伸会長は「どういう理由であろうと岡本さんが五輪に行けることはいいこと。ただ、国内団体がないと判断した理由と今後どうするかを聞きたい」とJOCに説明を求めた。

テコンドー問題経過
2003年 9月 JOCは10月末までに連合、協会の両団体が一本化されなければ五輪へ選手を派遣しないと通告。その後、期限を3月末に延期。
11月 JOCは両団体と1日付で関係を断ったと発表。
2004年 1月 両団体合同でアテネ五輪アジア予選選考会を実施。
2月14日 五輪アジア予選で岡本が国別出場枠を獲得。
3月18日 JOC理事会で、3月末一本化が派遣条件であることを再確認。
3月26日 河村文部科学相がJOCに派遣を要請。
3月29日 岡本の五輪出場を嘆願する約9万5000人の署名がJOCに提出される。
3月31日 両団体の幹部が最終の話し合いを行ったが決裂。分裂状態解消せず。
4月1日 JOCが団体解消を派遣の条件に挙げるが、協会は拒否。
4月3日 竹田JOC会長が個人資格による派遣検討を明言。方向転換する。

遅塚研一・JOC総務委員長の話 ほかの団体が本筋を守っていて、テコンドーだけがこうなることは遺憾の極み。特例中の特例で、JOCに加盟しなくても最終的に五輪憲章を使えば出られるような前例にはしない。

福田富昭・JOC選手強化本部長の話 政治家の発言で動いているわけではなく、国民の声として受け止めた。テコンドー界の問題であるが、彼女(岡本)を何とか救えないかということで、JOC独自の判断を出した。


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