紙面ニュース |
|
 |
 |
暴漢乱入!1位走者妨害/男子マラソン
<アテネ五輪:男子マラソン>◇29日
大会の最後を飾る男子マラソンで、前代未聞の乱入事件が起きた。トップを走っていたバンデレイ・リマ(35=ブラジル)が35キロ地点をすぎて、飛び出してきた暴漢に襲われて沿道に倒された。レースに復帰したが、後続のバルディニ(イタリア)ケフレジギ(米国)に追い抜かれた。国際大会では例のない暴挙は、マラソン発祥の地ギリシャで開催された五輪に大きな汚点を残してしまった。イタリアのステファノ・バルディニが2時間10分55秒で優勝。
信じられない光景だった。世界中が暴挙に驚いた。2位以下に20秒以上の差をつけて独走態勢を築いていたリマが襲われた。35キロすぎに、左の沿道からギリシャの民族衣装を着た男がコースに飛び出してきた。リマに体当たりすると、そのまま右の沿道に押し込んでしまった。
慌てて警備員が駆け寄る。コース脇のボランティアの顔が凍り付く。リマは観衆の中に倒れ、しばらく動けない。やっと立ち上がってレースに復帰したが、顔は苦痛にゆがみ、信じられないように両手を天に向けて首を振った。右足を押さえながら懸命に走っても、スピードは上がらなかった。その間にバルディニ、ケフレジギが後続から迫る。その差はあっという間に縮まり、38キロ地点で一気に追い抜かれてしまった。
それでもリマは足を止めなかった。最後まで歯を食いしばりパナシナイコ競技場へ走った。3位を守って会場へ飛び込むと、最後の直線では飛行機ポーズで、衝撃に沈むスタンドの観衆を盛り上げた。
国際舞台では前代未聞の乱入事件が、マラソン発祥の地ギリシャで開催された五輪で起きてしまった。それも大会の最後を飾るレースでの暴挙。リマの力走がなければ、マラソンの競技自体を台無しにするところだった。ギリシャ側は、大会開催中、警備に最大の注意を払っていただけにショックは隠せなかった。暴漢の男はギリシャ警察に逮捕された。
[2004/8/30/09:27 紙面から]
写真=コース途中のアクシデントにもめげずリマは3位でゴールする(撮影・宇治久裕)
|