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吉田が貫録の金/女子レスリング
<アテネ五輪:レスリング>◇23日◇女子55キロ級
五輪初採用の女子レスリングで55キロ級の大本命、吉田沙保里(21=中京女大)が金メダルをつかみ取った。トーヤ・バービーク(カナダ)に判定勝ち。96年から国際大会17連覇を、対外国勢74連勝で飾った。得意のタックルで6−0で完勝した。63キロ級の伊調馨(20=中京女大)も金メダルを獲得。48キロ級の伊調千春(22)は銀。72キロ級の浜口京子(26)は銅と、日本は全種目でメダルを獲得。日本の金メダルはこれで15個と、史上最多の東京五輪の16個にあと1と迫った。
吉田が勝った。敵を圧倒し、自分に勝った。「金メダル確実と言われて、いろんなプレッシャーがあったけど自分に負けなかった」。66キロの栄和人コーチ(中京女大監督)を肩車して絶叫した。普通は選手が肩車されるが「勝ったら見たことのないパフォーマンスを」と2人で決めていた。直径9メートルのマットに戻ると後方宙返りを披露。スタンドで見守った両親に拳を突き上げた。
タックルでつかみ取った金だ。左足を前に出す左構えから相手の右足を6度つかみ、すべてポイントにした。開始18秒の先制から、終了間際まで一方的に攻めた。96年ジョーブ女子国際大会から国際大会17大会無敗で対外国勢74連勝。元日本王者の父栄勝さんもたどり着けなかった金メダルを首にかけると目を赤くして言った。「これで全部そろった。家にオリンピックの金メダルだけがなかったから」。
1年前、世界選手権代表がかかる参考試合で山本聖子に敗れ、人目もはばからずに泣いた。その日を境に肉体改造に取り組み体重増と筋トレに努めた。食が細く55キロに達しなかった体重を、朝昼晩3食から5食にして増やした。
病弱な子供だった。遠足で1日に何度もおなかが痛いと訴え、小児病院に通ってばかりいた。が、3歳から父栄勝さんに自宅の道場でレスリングを指導され、体質も性格も変わった。小学生になると「私もおちんちんがほしい」と母幸代さんにせがんで困らせた。
低く速いタックルは、父から「世界で勝つために」と仕込まれた必殺技だ。「胸がつくくらいまで懐に入ったら、持ち上げるように前に出ろ。止まったら外国人のパワーに負けるぞ」。飛び込む寸前までの予備動作がないから予測は不可能で相手は嫌がる。吉田自身も「足に触ればポイントは取れる」と手応えをつかみ、五輪代表選考会でも体格で上回る山本に完勝した。
不安はあった。「柔道のヤワラちゃん(谷亮子)も五輪では3大会目で金だった」。体が硬くなり、準決勝では7−6の判定勝ちだった。だが、48キロ級の決勝で同門の伊調千春が負ける姿に気持ちを高ぶらせた。「絶対にかたきを取る」。バービークを前すると、返し技を恐れず全身全霊でタックルをぶつけた。
何度も上がった表彰台の一番高いところにまた立った。でもやっぱり、五輪のは格別だ。「これからも全部勝ちます。次の五輪も金を目指します」。吉田の最強伝説は北京へと続く。
[2004/8/24/09:52 紙面から]
写真=女子55キロ級決勝で金メダルを決め、中京女大の栄監督を肩車して喜ぶ吉田沙保里(撮影・栗山尚久)
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