女子ホッケーに寄付金1200万、貧乏脱出
こんなにリッチになりました。初の五輪出場を決めた女子ホッケーの境遇がガラリと変わった。年間2000万円の強化費で四苦八苦していたのが遠い昔のよう。3月のアテネ切符獲得以来、スポンサー、有名芸能人からの援助、寄付などで集まった金額は、年間強化費を軽く上回った。合宿では雑魚寝からビジネスホテルへ、遠征費の自己負担もなくなった。自分たちの力で極貧から脱出した選手たちは今、メダルという次の夢に向かって前進している。
広い部屋にふかふかのベットが貧乏脱出の証しだった。今月上旬のオランダ・ロッテルダム遠征。選手たちは市内で1、2を争う5つ星のヒルトンホテルに宿泊した。五輪出場権を獲得する前の海外遠征では、経費削減のためユースホステル、バンガローを利用していた。司令塔のMF岩尾は「夢みたい。競技に集中できるし、ヤル気もわきます」と言う。
年間2000万円の強化費はサッカーの180分の1だった。深刻な資金不足から涙ぐましい節約生活を強いられていた。国内合宿ではプライベートのない大部屋で10人ずつ雑魚寝。安田善治郎監督の「五輪が決まればホテルに泊まれるぞ」という言葉を胸に厳しい練習を積み重ねた。
ひたすら耐えてつかんだアテネ切符。絵に描いたようなサクセスストーリーは、多くの人の胸を打った。女子ホッケーの知名度は一気に高まった。その極貧ぶりが知られるようになると、全国から支援の声が上がった。日本協会へは1200万円もの寄付金が集まった。日本マクドナルド社とは2年間のスポンサー契約。歌手和田アキ子ら個人支援者も現れた。わずか数カ月で年間強化費の倍以上の金額が集まり、競技、選手たちを取り巻く環境は天と地ほども変わった。
◆(1)個人負担廃止
▽ビ 遠征のたびに各自5万円を負担。最年長DF加藤は遺跡発掘のアルバイトなどで資金を用意した。
▽金 自己負担金はゼロ。
◆(2)雑魚寝廃止
▽ビ 岐阜市内の合宿では近くにある東海女大の寮で雑魚寝。1泊2000円の格安料金だが、エアコンは午後10時で切れていた。
▽金 1泊7000円のビジネスホテルに。24時間エアコン完備で快適睡眠。
◆(3)必需品不足の解消
▽ビ 練習時のドリンクは手作りのお茶。テーピング用のテープも常に不足。月3万円の自己負担で用意する選手がいた。
▽金 スポーツドリンク、テーピングは支援者、スポンサーから大量に寄付。使い切れずにホテルやグラウンドに山積みされた状態。
◆(4)無理な乗り継ぎ廃止
▽ビ 格安航空券を利用するため、過酷な移動は当たり前。インド、ニュージーランドへ丸2日かけて行ったこともある。
▽金 エコノミー席は変わらないが、直行便などの利用で乗り継ぎが楽に。欧州へも1日移動が可能になった。現地での移動もサロン付きの高級バスになった。
一時は中止が決まったアテネ遠征も実現した。選手たちは本番ムードを感じることができた。出演したテレビ番組も50本以上。これまではどんなに頑張っても注目されなかったが、最近は街で「頑張って」と声をかけられる。もうアイスホッケーやラクロスと間違われることもなくなった。
周囲は一気に華やいだ。五輪出場の夢を実現し、選手たちに満足感が漂ってもおかしくはない。だが、不遇の時が長かっただけにどん欲だ。MF岩尾は「ちやほやされてダメになったとは言われたくない。一生懸命プレーすることが、応援してくれた方へのお返しになる」と話す。「次の夢は世界一。初心を忘れずに頑張りたい」とDF三浦主将。ホッケーブームを一時的なもので終わらせないために、アテネで新たなドラマを演じる。【田口潤】
[2004/7/28/12:04 紙面から]
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