「偉大な父に近づいた」塚原家の夢かなう
<体操>◇16日◇男子団体総合◇決勝
「体操をやる」。息子がそう口にした日から16年。一家の夢がかなった。
「偉大なメダリストの父に一歩近づいた」。28年ぶりに五輪の金メダルを勝ち取った体操男子団体。塚原直也(27)は3回目でついに表彰台の真ん中に立ち、親子で「金」を手にした。
「自分に追い付いてくれるのが夢だった」と言う父は月面宙返りを生み出し、5つの金をはじめ計9個のメダルを誇る光男さん(56)。母千恵子さん(57)も五輪の体操代表だった。「出るだけだったアトランタ、メダルを狙って空回りしたシドニー」と父子で振り返り、足踏みを続けたベテランが、一気に頂点に駆け上がった。
88年のソウル五輪の数カ月前だった。千恵子さんの手料理に舌鼓を打っていた夕食時。当時11歳だったサッカー少年が「体操を本格的にやりたい」と切り出した。
一人息子のひと言が両親にはうれしかった。でもちょっぴり突き放した。「体操は骨を折ったりするのできついよ」。どれだけやる気があるのか…。父と母は心の内を探った。すると「オリンピックに出てみたい」。本気だった。
当初は、旧ソ連のメダリストで光男さんの現役時代のライバル、アンドリアノフさんらがコーチを担当した。
「当時、世界をリードしていた国の流れを直也に注入してあげたかった」。父子の距離はあえて保った。
光男さんが直接指導に乗り出したのは、02年の釜山アジア大会後。国内大会で20位以下になるなど、どん底を味わった時期だった。
最初は現役としてのプライドが反発につながったこともあった。光男さんは「直也にとってわたしは父であり、コーチであり、ライバルでもあった」と明かす。
転機は昨年。母の言葉だった。「直也の周囲で世界を極めた人はお父さんしかいないでしょう。そのノウハウを素直に聞くことも必要でしょう」。はっとした。それからは「悩みを素直に相談できるようになった。今が一番充実している」と言い切る。
アテネでは、今後の個人種目に出場せず最初で最後の演技。「体操の道を追求していく。もう一度今日のような気持ちを味わって、父を越えたい」。4年後の北京を見据えていた。
[2004/8/17/12:46]
写真=体操男子団体総合で金メダルを獲得、スタンドで大喜びする塚原直也の母親千恵子さんと父親光男さん(共同)
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