2004年8月29日付紙面から
心の豊かさならギリシャ人が金
老人が裸でチェスに興じていた。競泳取材の合間に近くのレストランまで歩いた。メーンストリートからひとつ中に折れると、スポーツの祭典とは別の世界があった。バカンスの時期と重なっている影響もある。毎日が日曜日のような、ゆったりとした時間が流れている。老人たちの表情は心底楽しそうだった。
アテネ滞在も約1カ月になる。遅れるのが当たり前のバス、仕事がスローな店員…。日本からやって来た身としては、ギリシャ人のマイペースぶりにあきれることも多かった。イライラも募った。だが、チェスをする老人たちの笑顔は、せわしない心を一瞬だが癒やしてくれた。
25人対3人。日本とギリシャの自殺率を示したものだ。人口10万人あたり25人が自殺する日本は、先進国ではトップだ。1日100人が自ら命を捨てている。一方のギリシャは世界的に見ても少ない。昨年の自殺者はゼロという話もある。なるようになるさのラテン気質。人生をいかに楽しく生きるかを最も大切にしているからなのだろう。
アテネをたくさんの日本人観光客、応援団が訪れた。大会開幕前から大量の報道陣を選手たちに張り付かせたのも日本ぐらいだ。不況といっても世界では裕福だ。だが、心は満たされているのだろうか。心の豊かさでは、ギリシャ人に金メダルを贈らなければならないだろう。【田口潤】
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