2004年8月12日付紙面から
僕の五輪は洪水で始まった。アテネ入りし、大会組織委が用意した宿舎に入ったのは6日深夜。大会後、大学の学生寮になる施設は、新築のにおいがして気持ちがいい。だがシャワーを使った後、部屋の様子を見て目がテンになった。ベッドの周りまで水が流れ出している。脱ぎ捨てたシャツもパンツもびしょぬれだった。まだ使ってもいない排水溝が詰まっていたのだ。
準備遅れが指摘されてきた今大会。やっつけ工事の被害をいきなり被ることになった。以来6日間、ドアノブが取れたり、ロッカーの扉が閉まらなかったりとトラブルが続く。だが、あまり悪い気がしない。どちらかといえば毎朝目を覚ますたびに楽しい気分になっている。
洪水の翌朝、部屋にやってきたボランティアの女子大生は「担当者がくるまで待って」と、本当に申し訳なさそうに僕のパンツをドライヤーで乾かしてくれた。街中でバス乗り場に迷っていると、中年のおじさんが手を引くようにして案内してくれる。想像とはまったく逆のギリシャ人が目の前にいる。優しくて朗らか。時間にルーズではなく、彼らの体内時計が我々よりゆっくり動いているだけなのだろう。
この国には「旅人は心からもてなせ」という伝統があるという。それを実感している今、21世紀最初の五輪が無事に終了することを願っている。【小堀泰男】
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