テロ警戒でとばっちりイスラム教徒
アテネのイスラム教地区では、モスク(イスラム寺院)がない。五輪前、郊外に建立予定だったモスクは地元住民の猛反対でとん挫した。中心部の建設も政府が許可しないという。教徒は雑居ビルなどの一室を「仮設モスク」にしているが、テロ対策の厳重警備の中、とばっちりを受ける形で、いまだに連日警察の尋問を受ける日々という。
アテネ中心部「シンタグマ広場」から北西に約1キロ。ソフォクレス通りに来ると、商店の看板にアラビア語が目立ち始める。この付近がパキスタン、バングラデシュ、イラク、エジプトなどの人々が多数集まるギリシャ最大のイスラム教地区。ここの雑居ビル3階に、小さな「仮設モスク」を見つけた。
アテネ周辺には約10万人のイスラム教徒がいるとされるが、いまだ大型モスクがないという。3階の奥にある部屋をのぞくと、10畳程度の狭く殺風景な部屋で、肩を寄せ合い、床にひざまずきながら約10人が礼拝中だった。
バングラデシュ人のリーダー、ラシートさん(40)に聞いた。みな目が鋭い。思わず「ここにはイスラム過激派テロリストは本当にいないの?」と聞いた。「いない、いない。イスラム教徒はテロなんかしないよ」。それでも警察からは期間中、まだ徹底マークされているという。「警察はよく来る。今日もここに来たばかりだ。全員が名前、住所、職業などを毎回質問され、何度も調査票を作られるんだ」と苦笑した。
実はこの「疑念」がモスクを造れない大きな理由という。まず政府は、五輪までにアテネ中心部から東に約10キロ離れた郊外のペアニアに大型モスクを作り、そこにイスラム教徒を集めてしまう計画を立てた。だが地元住民が猛反対。さらにイスラム教徒も「遠い」と反発し計画は中断した。
一方、イスラム教徒側は、アテネ中心部に自分たちの資金でモスクを造ろうとしたが、政府が許可せず夢のモスク建設は宙に浮いたまま。「政府は『違法』と言って建てさせてくれない。われわれには何の問題もないのに!」(ラシートさん)。
ペアニアまで車を飛ばした。建設予定地周辺は、確かにまだ草原のまま。地元中年男性は、ほぼ一様に「この辺はギリシャ正教の教会が多い。モスクができて、イスラム教の政治活動の中心地になったら大変なことになる」。
ソフォクレス通りに戻り、パキスタン人とお茶を飲んでいると、すぐ10人近く集まった。みな「われわれの間にはトラブルもない」と真剣に訴えてくる。五輪が終わっても、問題は長く尾をひきそうだ。
写真=アテネ市内にある雑居ビル内の狭い「仮設モスク」で厳粛に礼拝するイスラム教徒ら(上)アテネ市内のイスラム教地区には、アラビア語などの看板が目立ち、異国の雰囲気(下)
|