2004年8月24日付紙面から
レース1週間前に1度糖質断ち
近年、マラソンはどんどんスピード化し、特に女子にとっては最も過酷な種目となった。優勝した野口さんは身長150センチ、体重41キロの小柄な体であり、レースへのコンディショニングは、困難を極めただろう。
単純に計算して体重41キロの女性が体内に蓄えているエネルギーは480キロカロリー。特に準備をしなければ約9・1キロでスタミナは枯渇してしまう。完走するには、特別なコンディショニングでレースに臨む。
高橋尚子選手は、1回でステーキ450グラムを平らげるなど平均4500キロカロリーは食べる。毎日20キロ以上走りこみ、高脂肪と高タンパク食を徹底する。
長距離選手のレースでは糖質(ご飯やパン、じゃがいもなど)が最も大切なエネルギー源で、レース1週間前に「グリコーゲンローディング法」というコンディショニングを行う。つまり普通通りに食べていたら、糖質は食べた分100%しか体内に貯蓄できない。
しかし、レース1週間前から糖質ばかり食べると約120%まで増やせる。しかし、まだまだ足りない。そこでレース1週間前に2、3日ほとんど糖質を食べず、体内の糖質を使い切ってしまう(ウォッシュアウト)を行う。その後の5日間、一気に糖質ばかり徹底して食べると体内には一気に170%まで増える。
女子マラソンにはまだまだ課題が多い。近年コースは、ほとんどコンクリート道路で靴と体重は大きなポイント。元五輪代表の増田明美さんは、かつて優勝したレース終了後の検査で8箇所の疲労骨折が見つかったと聞く。足裏で赤血球を破壊したり、筋肉内での溶血などスポーツ貧血も起こす。女子にとってのスピードレースはまさに身を削っている。
小柄な野口選手は体が小さい分、外国人選手に対してハンディがある。暑いアテネはもっとも過酷と思われた。彼女の努力と忍耐がもたらした金メダルである。(平石クリニック院長)
◆平石貴久(ひらいし・たかひさ)1950年11月4日、鹿児島県生まれ。東京・六本木「平石クリニック」院長。専門は内科、スポーツ医学など。サッカー、野球、陸上、ゴルフ、格闘技など多岐に渡る種目で選手、チームの健康管理を担う。
|